郷愁の佃島 鬼平犯科帳異聞

 久保田 義彦(野方・昭33年教育)

 

 雨降れば佃は古き江戸の島  秀 

 今の東京で江戸の面影の残る所といえば、佃島をおいて他に無いでしょう。

 火付盗賊改め方、長谷川平蔵(一七四五〜一七九五)は、佃島の隣、石川島に人足寄場を作り、無宿人や罪人を使役に従事させ、刑期が終わると生業資金を持たせて社会に復帰させました。

 さて、平蔵の裁きには不良少年だった頃の体験が色濃く投影されています。人の性は善であるということをいつも肝に銘じていたと思われます。

 私は佃島が好きで、学生時代からゼミの仲間としばしば訪れましたが、佃島散策は今も続いて、夕闇せまる住吉神社の境内に立っていると、物かげから鬼の平蔵がのっそりと現れてくるような幻覚におそわれます。

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