◎新シリーズ「その道の達人」が斬る!

当世 「離婚事情」

弁護士 宮本 智(上鷺宮/昭46年・法)

 マスコミ的に「熟年離婚」が云々されたせいか皆さんから「多いんですか?」とよく心配気に聞かれることがある。正解はなんとお答えすべきかわかりませんが、私自身も夫の定年を契機に「離婚」が問題となったケースを何件か受任した経験はありますが、果たして多いと言えるかは疑問です。

■多いのは 「妻から迫る離婚」

 それよりも皆さん、「離婚」を「結婚」と同じような気持ちで考えられるようになったのではないでしょうか。好きだから「結婚」する。嫌いになったから「離婚」するという具合にです。しかも私の実務経験では、「離婚」を迫るのは妻のほうが多く、夫は受けて立つ側が多いということです。妻から嫌われてもなかなか「離婚」に応じようとしないのが夫です。こじれて「調停」や「裁判」ともなれば、夫婦の秘め事が暴露されてしまうにも拘わらずです。

 一旦、結婚で得た「夫婦」という形を何とか維持することに懸命になるのは、夫のほうが多いのではないかというのが私の実感です。勿論、これにも例外があって、異性との交際上手な一部の人たちを除いた、ごくごく普通の人たちの話です。

■「離婚」は私事ではない

 私が常々言うのは、「結婚」は男女の合意のみで自由にできますが、「離婚」はこじれると国家が介入するような、もはや、二人だけの私事ではない大事なのですよということです。簡単に「離婚」はできないのですから簡単に「結婚」しないで下さいとも言います。

 不動産の貸借も「結婚」も契約です。前者についてはあらかじめ期間を定めて、期限がきたら当然に契約終了という形が法的に認められましたが、「結婚」にはそんな形はこの先も絶対に認められないのでしょうから、将来の伴侶を安易にチョイスしてはいけないのです。

■増える「微妙な理由」

 最近は相手方の暴力やギャンブル、それに不貞といった離婚理由ワースト・スリーのような典型的なケースではない、もっと微妙な理由で「離婚」を真剣に考える人が増えてきました。ですから、これからますます「調停」や「裁判」にまで「離婚」が持ち込まれるケースは多くなることはまず間違いないでしょう。弁護士も忙しくなるわけです。

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